《京都 ということ》
京都嵯峨野に建つ、昭和初期の和風住宅の改修です。離れであるこの建物を生活の場ではなく焼菓子工房として再生を図るものでした。
大正から昭和にかけての佳き趣きを残すこの離れには、1階に四畳半の茶室があり、また2階には主たる座敷が備わっていずれもがこの建物には相応しく、積極的に継承していくこととしました。その上で、玄関を含めた残る空間に当時探求されたモダンな新生活を映し出す新しい和の様式の面影を偲ばせることを試みました。
限られた内部空間のなかでそれぞれの部分をつないでいくこと、抜けをつくり透かしていくこと・・・それを格子や欄間や天井の高低などを用いて企てています。
ハイカラなモダンボーイであったであろうお祖父様が制作された金属工芸が建物内には数多く残されていました。各所に飾られたそれらの作品とこれから創作されていく焼菓子とが、再生されたレトロな和の佇まいの中で新しい気配を醸し出していきます。
このような空間と時間の刻みかたこそが 京都 ということなのであろうか、と思いいたるのです。
→ 改修前の様子はこちらでご覧いただけます。