《おおい町 減築の住まい》
大阪在住のご夫婦がご主人の定年後のお住まいとして、郷里のご実家でスローライフを営むべく計画されました、若狭地方の築60年の民家の改修です。
そのお住まい自体もまた様々な再利用木材で建設され、年月の折々にも増改築が施されてきているものでした。耐震性には不安があり、木材の腐朽・損傷も進んでいる様子です。室内は段差も多く、天井は低くて明るさも不十分であり、冬の寒さは大変厳しくあります。それらの負の要因を改善し、そして落ち着いた民家としての内外観がご要望されました。
お二人だけの生活に不要な2階の諸室を取りのぞき吹抜として、東~南~西と三方向から常に陽射しが降り注ぐ明るくゆったりとした空間の拡がりをつくります。間仕切りの位置も変更し、引き込みの紙障子で夏はひろびろと、そして冬には暖かく区切ります。太鼓張りとして断熱性能を高めた紙障子は、その一部を片面張りとして組子を覗かせ、視覚的なアクセントとしています。
不安な構造はすっかり取り除き、間取りも仕上げも一新してよみがえったお住まいは、新旧の様々な材料・設えと丁寧な職人の仕事とが渾然一体となって、人と住まいと暮らしとが、手の痕跡・時間の痕跡とともにあることを感じさせてくれます。
→ 改修前の様子はこちらでご覧いただけます。