《播磨科学公園都市近未来戸建住宅》
時 : 20XX年
所 : 播磨科学公園都市のとある一角
登場人物 : 大人1,大人2,子供1,子供2
大人1・大人2の性別は何であってもかまわない。つまり、いずれが男でいずれが女であっても構わないし、もちろん同じ性でも構わない。子供1・子供2は兄弟かもしれないし、赤の他人かもしれない。つまり4人はたまたま同じ屋根の下に同居しているだけなのかもしれない。一見ごくありふれた4人家族の体をなす。各人は年齢・性別を問わず、互いに対等な主役を演ずる。
第一幕 ある日曜日の夕暮れ
舞台の上には食卓と、精一杯のご馳走が用意されている。
大人1 :今日は本当に楽しかったなあ。
大人2 :こんなによく笑ったのは久しぶりですよ。
子供2 :今日のご馳走は一段とおいしそうだね。
子供1 :わたしおなかすいちゃった。
全員 :いただきます。
(談笑が続く)
大人2 :来週は皆でホームコンサートね。
子供1 :私しっかり練習しとかなくちゃ。
子供2 :また次の土曜日が楽しみだね。
大人1 :そうだな。さて、そろそろ寝ようか。
子供1・2 :おやすみなさい
(暗転) 幕
理想的な家族の団欒を演じ終わり、それぞれは静かに楽屋に帰り、次のweekendまでの自分の大切な時間に再び戻っていく。照明がおちた静寂の中、舞台は無人のままにひっそりと次の演目を待つ。
社会がどんどん住宅内に入り込み、個人は家族よりもより強く社会に結び付けられる。社会から強引に切り離された舞台の上で、にもかかわらず社会に対して、あるいは自分自身に対して家族を演じることにより個人は居場所を保ち続けていく。
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この計画は兵庫県企業庁主催の公開設計競技応募案であり、佳作として評価をいただきました。